遠田和子氏: 今身近に持っているのが、これ、Kindleの最新版です。Kindle Touchが日本から注文できるようになった時点(2012年2月)での最新版です。Amazon.comで注文受付が始まり、すぐ買いました。これが私の2台目のKindleです。初代Kindleはキーボード付きですが、これはタッチパネルです。いつもバッグの中に入れています。本は重たいでしょう。でもKindleだったら軽いですから。
それで今日は、いろいろなことができることをお見せしたいと思いまして(笑)。
例えばこれが、いま持ち歩いて読んでいる本です。
――ジャンルは小説などですか。
遠田和子氏: 私はノンフィクションとか小説が好きです。最近Kindleで読んだノンフィクションはWalter Isaacsonの『Steve Jobs』。Kindleはオーディオ機能が付いていますが、結構、音声が良くて。(英語を話す男性の音声を再生しながら)これ機械音声です。人ではなくて、機械でここまでの聞きやすさです!ナビとか券売機の音声とは違うでしょう?凄く自然ですよね。
――声の種類もありますか。
遠田和子氏: はい、女性の声に変えられ、速さも調整できます。これはデフォルトの速さですけど、ゆっくりも早くもできて、音声に連動してページも順々に変わっていくんです。電子化の大きなメリットの一つは音声化です。
――これによって、もちろん英語学習にも役立つし、ハンディキャップをお持ちの方でも本を読むことが可能になりますよね。
遠田和子氏: そうです。非常にアクセシビリティが高まります。画面で字を何倍にも大きくできるのはご存知ですね?KindleはE-inkですので目が疲れません。iPadで読むと、ちょっと辛いですけど。
それで電子書籍の何が良いかというと、Amazonの場合、デバイスに依存せずに本が読めることです。私はKindle Touch以外に、閲覧ソフトのKindleアプリをiPhone、iPad、 MacノートブックとWindows PCに入れています。そうすると、例えばKindle Touchを忘れて外出しても、さっきまで読んでいた本をスマホで開けると読みかけのページが出ます。読んでいる箇所がデバイス間で同期されるからです。そういう所が、電子書籍はすごく便利です。
電子書籍に関する、キーワードは「いつでもどこでも」ですよ。よく人に電子書籍を薦めるとき、ドラえもんの「どこでもドアだよ」と言います。例えば去年の夏、ケータイも圏外の山の中に10日間くらい滞在しました。周りは木ばかりで、本屋なんかもちろん1軒もないです。でも車で10分位の所にWi-Fiが使える場所がありました。毎日パソコン持参で、いそいそとそこに通っていました。ある日読む本がなくなったので、このWiFiスポットでインターネット接続し、Amazon.comで本を買ってダウンロードしました。だからどこでも本屋さんなの。今この瞬間も、この場で電子書籍を買えますよ。この「いつでもどこでも」感はすごいです。はじめて電子書籍をダウンロードしたとき、素晴らしい世界がパーッと開けた感じがしました。
――こういった最先端のものに触れるのはどういうきっかけからだったのですか。
遠田和子氏: 私は日英翻訳者です。翻訳者というのは仕事柄、最先端の技術をいつもウォッチングしています。通常は文学を翻訳しているわけではなくて、実務分野の仕事が多いです。そうすると翻訳する作業が、知らないことを調査し、新しいことを知るプロセスと重なります。『Google 英文ライティング』を書いたのは、翻訳で英文を書くにあたって、自分の英語を検証するためにいつもGoogleを使っているからです。
――翻訳をされている方では、ITなどに詳しいんですか。
遠田和子氏: 翻訳者でITに詳しい人、多いです。ITに詳しくないと生き残れなくなってきています。大昔のイメージ、紙とペンと辞書で…そんな翻訳者はもういません。
ITの英語への活用という意味で、ウェブ・リソースをリーディングに生かすことも本で書きました。こんなにネットワークが広がって英語学習している人が大勢いるけれど、どれだけの人がウェブを十分に活用しているでしょうか。「英語が上手になるにはどうしたらいいですか?」って聞かれることがあります。あと「英語で何を読んだらいいですか?」「Timeとかですか、Japan Timesですか?」(笑)そんな質問には、「それ、止めた方がいいです」と答えます(笑)。英語を学ぶ目的のためにTimeやNewsweekを読むのは、内容に興味がなければ難しいです。自分が好きな物から入っていくべきです。
日本の英語教育は、英語そのものが目的化していると思っています。英語学習者はよく、「TOEICで○○点を目指す」といいます。でも「TOEICで何点取って、それで何をしたいのか」という最終の目的が曖昧です。英語はただの道具であって、自分の真の目的を達成するために英語を使えば、英語自体も磨かれる、というのが私の考えです。「何を読んだらいいですか?」と聞く人には、「あなたは何が好きですか」って聞き返すわけです。サッカーが好きなら、「サッカーについて英語で書かれたものを読めば?」と。