励みになってくれる編集者
――先生は、ウェブページも作っていらっしゃいましたよね。
渡辺隆裕氏: 96年ぐらいから作り始めました。インターネットが初めてできた時に、東工大もそれに関わっていて、wwwができたその頃から「試しに作ってみないか」と言われていたんです。まだ日本にウェブページがほとんど存在しない頃からやっていてゲーム理論の情報を発信したりしていました。ありがたいことに、そのホームページを見たナツメ社関係の方から、出版のお話をいただいたんです。しかも図解雑学のようなイメージのもので、片方に図があって片方に文章があるといった見開き形式のものでした。その話を聞いて、「自分に合っているかもしれない」と思いました。
――本の制作は、どのようにして進んでいったのでしょうか?
渡辺隆裕氏: パケットという編集プロダクションの、三輪さんという方が担当だったのですが、この方には本当に感謝しています。執筆中も、彼が非常に丁寧に読んでくれて「ここがなぜこうなるか分からない」とか、「ここからここまでが難しくて何を書いているのか分からない」などと、事細かに言ってくださるんです。そういったやり取りをしながら作っていきましたが、その作業は非常に楽しかったです。また、その頃は研究や論文に忙しかったため、催促されることもありました。「催促する時は、きつく言ってくれ」と私の方からお願いしていたこともあり、「どうなりました?何ページ進みましたか?」とマメに言ってくれていました(笑)。それに応える形でかなり頑張って書いて、分かりくい点も丁寧に対応してもらったので、やり遂げることができたのだと思います。その編集者の三輪さんがいなければ、私は本を書き上げられなかったようにも思いますので、その本は2人で作った物だなと私は感じています。
――編集者との密なやり取りが、本の完成につながったのですね。
渡辺隆裕氏: 悪いところは悪いと言って直してくれる、良いところは「ここが分かりやすい」と言ってくれる、そういう部分で励みになってくれる方が、私にとって良い編集者なのです。そういう方と一緒にやることで、本を書き上げることができるのだと私は思っています。
――本を書くことによって、伝えたいこととはなんでしょうか?
渡辺隆裕氏: 「こういう方法を使えば分かるんだ」ということを理解してほしいと思っています。もう1つは、数学の本質というのは数式に頼らなくてもなんとか伝えることができるものだと私は思っています。つまり、ゲーム理論や経済の概念を、式に頼らずに教えることができるということ。内容としてはお話ではなく、例えば演習問題を出した時に、ある程度数字で答えられるぐらいになるようなものを、みんなに伝えたいと思っています。