開くたびに中身の変わる、魔法の本があったら面白い
ゲームクリエイターの米光一成さんは、1987年コンパイルに入社し、同社初の専門企画職として、『魔導物語』や『ぷよぷよ』などのタイトルを生み出されました。その後同社スタッフが設立したスティングに移籍。看板クリエイターとして『バロック』などを手がけられました。退社後、2002年には、麻野一哉・飯田和敏とともに「ベストセラー本ゲーム化会議」を執筆。現在はフリーのクリエイターとしてオンラインゲーム・モバイルコンテンツを中心に手がけながら、作家・研究活動も行っていて、2007年に立命館大学映像学部教授に就任されてからは、後進育成にも努めています。また電子書籍を電書と呼び、「宣伝会議 編集・ライター養成講座 上級コース プロフェッショナル・ライティングクラス」の受講生を中心に、2010年に電書部を設立されました。米光さんに電子書籍のこれからや編集者の役割などについてお聞きしました。
アイディア・情報は外に出す
――立命館大学では、どのようなことを授業でされていますか?
米光一成氏: 映像学部では、インタラクティブコンテンツの制作や集団創作の方法などを教えています。座学ではなくワークショップ形式で、実践しながら学んでいきます。その延長線上で、池袋のコミュニティーカレッジでは毎シーズンテーマを変えてやっていて、今はタロットカードを思考ツールとして使う講座をやっているところです。
――毎回テーマを変えるというのは大変ではないですか?
米光一成氏: 同じことをやりたくないというのもあります。僕が飽きてしまうんです(笑)。受講生も半分ぐらいは前回も参加してくれている人なので、毎回違う方が面白いだろうと思って。
タロットを使った講座の前はインタビューの講座でした。受講生が2人1組でお互いにインタビューしあうのです。でも、インタビューって難しい。ですから、「次はどうしたら簡単にインタビューできるか」ということで、タロットカードで相談にのればいいんじゃないか、と。
例えば、「部屋が散らかっていて片づけられない」という相談があるとします。インタビューする側は、「タロットを引いてこういうカードが出ましたが、何か思い当たりませんか」と聞きます。それに答えていくうちに自然とインタビューになるのです。タロットがあるからやりやすく、「何を聞けばいいかな」といった変な間が消える。インタビュー講座の次がタロット講座なので全く違うと思われがちですが、根っこの部分は同じなんです。
講座をやりながら僕も教わっている所があって、「この辺が難しい」というのが分かると次は改善ができるので、そこはインタラクションというか。こちらが伝えるものもあるし受講生から伝わってくるものもあります。
――本を書いたり何かを作る時にも、作る過程で発見がありますか?
米光一成氏: 本を書く作業って、ぼんやり考えていたことを文字化する、クリアにしていく作業。書いてみて初めて分かることはたくさんあるので、書くことが考えを深めるきっかけになりますね。
発想した時は興奮しているので「すごい!」と思っていても、並べてみると当たり前のことだったとか、書くと冷静に客観視できます。そこが大切です。思いついたまま勢いで突進すると、気づけばとんでもないところで迷っているってなりかねないので、書くことは大事だと思います。
――そういう意味ではTwitterは有効なツールですよね。
米光一成氏: Twitterは、リアクションの有無がはっきり分かるので、便利ですよね。今、宣伝会議という所で編集・ライター講座をやっていますが、今シーズンは、特にTwitterをやることを受講者に進めています。Twitterでどの位リアクションがあるか、何を書いたらフォロワーが増えるのかを知ると、どうしたら伝わるのかが分かり、ライターとして表現する力が鍛えられるんです。
――ご自著の中でも、「アイディアを思い付いたらまず書いて、外に出してみる」と書かれていましたね。
米光一成氏: アイディアや情報を外に出して、「この人はこういうアイディアや情報が好きだ」ということが伝わると、「ここに、こんな情報があるよ」という風に、別の情報となって戻ってくるのです。ですから、情報はどんどん書いて出していくことが大切だと思っています。
著書一覧『 米光一成 』