吉山勇樹

Profile

年間200日を超える企業・団体での研修・講演をはじめ、業務改善・プロジェクトコンサルティング、大学や官公庁からの受託プロジェクト等を手掛ける。同時にNPO法人日本教育再興連盟では陰山英男氏らとともに教育のベストプラクティスの収集と普及に努める。また、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等、多数のメディア出演・執筆活動も精力的に行い、新規出版も続々決定。数々のベストセラーをリリース。過去に共著も含め20冊の出版。海外翻訳本も4冊。 アジア圏を中心に好調なセールスを記録。若手ビジネスパーソンのベンチマーク的存在として支持を受けている。DJ・仏シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ。

Book Information

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本は「型」を学ぶための、自分の根っこを作るためのツール



株式会社ハイブリッドコンサルティング代表の吉山勇樹さん。2008年に出版した『残業ゼロ! 仕事が3倍速くなるダンドリ仕事術』(明日香出版社)が間もなく10万部を突破、共著も含め20冊の本を出版し、数々のベストセラーをリリース。全国TSUTAYA年間人気著者ランキングで5位に入るなど、 若手ビジネスパーソンに広く支持を受けています。大学時代、ベンチャー企業の創業・運営に参画し、卒業後は大手通信事業会社で各種プロジェクトマネジャーとして活躍。独立後、現在は年間200日超の企業・団体での研修・コンサルティングを幅広く展開。業務改善や残業削減など著作をより実践で体現されています。そんな吉山さんに、独立のきっかけや事業内容、ご自身にとっての「本」とは何かなど、お聞きしました。

最も大切なのは〈Will=意志〉


――ご自身が代表を務める株式会社ハイブリッドコンサルティングの事業内容についてお聞かせください。


吉山勇樹氏: 仕事の段取りや効率化を中心とした企業コンサルティング、企業研修や人材育成のお手伝いをしています。効率化、段取りの切り口でお手伝いに入ることが多いのですが、最近では若手・中間管理職・経営層など階層を問わず、「あらゆる層の問題解決のお手伝いをしている」というのがシンプルな言い方かなと。仕事をする業界も様々で、今は、お邪魔していない業界の方がまれですね。

――どの業種も業務が滞る原因は似ているところがございますか?


吉山勇樹氏: そうですね。やはり、日本の「働き方」の文化の影響が大きいなと思います。いわゆる残業自慢、多忙自慢、睡眠不足自慢。仕事は片付かないけれども、なんか頑張っている、汗水たらしているっていうのが偉いという文化。それってちょっとナンセンスかなと思うんです。外資系の企業に行くと、そういうことを言っている日本人を、「セルフマネジメントができていないことを周りに露呈しているだけだ」とおっしゃる方もいます。

――効率アップさせるためにはどういった改善が必要ですか?


吉山勇樹氏: Skill(技能)も必要だけれど、もっと大事なのはWill(意志)ですね。若手育成をキッチリやっても、結局上司が「そんなものは今まで通り気合と根性でやれ」って言ってしまうと本末転倒になる。ベースとして全員のWill、意志を改善していくという全体の意識が一番大事なのだろうなと思います。

――吉山さんがこの仕事を始めたきっかけは何でしたか?


吉山勇樹氏: 僕自身、大学を卒業して大手通信事業会社に勤めていたころ、残業も多かったし、段取りも悪かった。そういう失敗をしたから、それを改善するための方法をインプットしようという意識が働いたんです。インプットの手段として、人やスキルアップにかかわる事業をするコンサルファーム(コンサルティングを主業務とする企業)に入ったというのが第1歩でした。そこに入って、様々なことをインプットしていくために、本当に無数の本を読みあさりましたね。今になって思えば、その時初めて自分で意志を持って本を読んだと思います。本って、何かノウハウを身につけようという本当の思いがないと、単純に読んで終わりになってしまう。目的意識をもって書店に行く、目的意識をもってAmazonでクリックする。そうすると、自分のフィルターが変わってくるんですね。僕自身、その辺を意識的にできるようになってから、ずいぶん変わってきたなと思います。だから、電子でも紙媒体でも、本の読み方、本への接し方というのは重要だと思いますね。

本を読むことは、先人の知恵を行動に変換するプロセス


――よいインプットをするために、なぜ本を読むことが重要になるんでしょうか?


吉山勇樹氏: 本はある意味、型を知るためのすごくいいツールだと思うんです。千利休が「守破離」という言葉を残しています。まず「守」について。これは師匠のやり方、いわゆる先人の教えを一つの「型」「基本形」としてきちんと学んでその通りにやる。それがまず大事だと思っているんです。しかし、型を知ろうとせず、最初から自己流でやっているケースはすごく多い。実際に仕事の進め方でも、優先順位やタスク管理の話はどの企業でも出てくるんですよね。じゃあ大学時代に優先順位のつけ方やタスク管理方法を学んだかというと、当然学んでいない。ならどこでインプットしたかというと、結局、自分なりに本を買って読んだかどうかですよね。本を読むということは、要は先人の知恵に学ぶということです。その一方で先輩社員をまねてやってきたという人も当然いる。それはそれでいいと思いますが、その先輩も型を知らずにやっていた場合、型破りの方法を本当の型だと誤解してしまいますよね。ですから、セカンドオピニオン、サードオピニオンで色々な先人の知恵を知るという意味でのインプットを、まず最初にやるべきだと思います。本を読み、そこで気づいたことを何か1つでも行動に移す。その結果が成果につながるわけです。何かで成果をあげるためには、上質のインプットが欠かせません。そのためにも、やはり本を読むべきだと、僕は思っています。

――自己流にならないためにも先人の知恵である本が重要になってくるんですね。たくさんの本と出会ってきた中で、吉山さんの人生の転機となった本はありますか?


吉山勇樹氏: 「守破離」の「守」の部分、型を学ぶという意味で、僕自身のバックボーンは、プロジェクトマネジメントなんです。そのベースとなっているのが、プロジェクトマネジメント協会の『PMBOK(ピンボック)ガイド』。これはアメリカで編集されるプロジェクトマネジメントの知識体系なのですが、日本語訳版として結構分厚いのが出ています。これが一番の僕のベースになっています。日本古来の段取り、仕事のステップアップのさせ方、目標設定、タスクの洗い出し、細部計画、実行、進捗管理、振り返りなどですね。いわゆるPDCA(Plan・Do・Check・Action)、われわれはそれにG(Go)をつけてGPDCAサイクルといっています。そういうものを組み立てて仕事の段取りを体系化していけたのも、ピンボックを読んだからです。その型が先人の教えであったからこそ、それをもとにアレンジしてきたので、転機となる1冊を選ぶなら、僕は『PMBOKガイド』かなと。

――『PMBOKガイド』は今でも何度も読み返されるのですか?


吉山勇樹氏: これは4年に1回更新されるんです。これがまたミソなんです。時代の変化によって、プロジェクトマネジメントの考え方も変わります。例えばコンプライアンスやセキュリティポリシーなど、10年、20年前はそこまでうるさくなかったわけですよね。ですから型も、変化に対応しながら更新されていく。そういうところもいいなと思っているんです。

――『PMBOKガイド』とは、どうやって出会ったのですか?


吉山勇樹氏: 僕が当時よくしていただいていた経営者の皆さんが「これがいいよ」と薦めてくれたんです。本って口コミや人からのプレゼントで知ることが多い。身近に尊敬できる先輩がいらっしゃるのであれば、その人がどんな本を読んでいるのかを見るといいと思います。その人のバイブルにしている本には、血となり肉となったものが凝縮されていたりしますので。だから僕は、色々な人に「最近何か面白い本ありますか?」って聞くんです。刊行される本は多いですし、書店のサイクルも速いので、すごくいいものでも埋もれてしまうことは多い。尊敬できる人たちがフィルターをかけているから、それはいい本だっていう考え方もできると思います。

情報を編集する、自分なりのファクターを持つ


――いい本も埋もれてしまうという話が出ましたが、電子書籍の場合、絶版や埋もれるということはないのではと思います。電子書籍は過渡期ですが、広まることで読み手の変化は何かあると思いますか。


吉山勇樹氏: これはもう完全に変わると断言していいでしょう。本って、インプットしている人は相当の量をされていると思うんですよね。僕も、気づけば本に埋もれていたりします。それだけ量があると、目の前にある本は手に取りやすいですが、書棚のどこにしまったのか分からないものも多い。その点、電子書籍なら、タグや目次インデックスがあって検索しやすい、情報にアプローチしやすいですよね。欲しい時に、欲しい情報が、欲しいだけ得られて、インプットできるのは大事なこと。自分なりのライブラリーがPCやiPadの中にあるというのは、とても心強いことだと思うんです。情報は収集が目的ではなく、編集してアウトプットすることが大切。ですから、どう編集するかが重要です。本以外もメディアはたくさんあるわけで、気軽に色々な情報に触れられる一方、それを選択して編集するなど、自分なりのファクターを持つことが重要だと思います。

――すると、最初にお話に出たWill=意志は、電子書籍を読むにも大切になりますね。


吉山勇樹氏: そうですね。情報収集にも当然Willがいる。どういう情報を、どんな狙いで収集するのか。まあ、「何となく」でもいいんです。何となくこのビジネス雑誌はいつも買っているとか。この著者の新作はチェックしているとか。その「何となく」に、「気づき」のポイントが何かある。だからまずどんどん収集して、その後の編集作業に自分の思いをぐっと入れていく。それに慣れてくると次は、アウトプットをイメージしながらインプットするようになる。自分のライブラリーにどんなコーナーを作るかとイメージできるようになるんですね。

――吉山さんは電子書籍は頻繁に利用しますか?


吉山勇樹氏: 僕は、毎年年間で120回は飛行機に搭乗している出張族。移動中のインプットのことを考えると多頻度ユーザーといえるのではないでしょうか。移動中はやはり読書しますね。電子書籍です。iPadでも読みますし、iPhoneでも読みます。

――iPadなどを使ってみて、こんな機能があったら便利じゃないかなど、ありますか?


吉山勇樹氏: 僕は、アウトプットしながら本を読むということをしょっちゅうやるんです。ただ読んだだけでは頭に残らないので、とにかく気になったキーワードをどんどん打ち込みながら読む。だから、自分なりの「気づき」のデータベースがきちんと蓄積できる仕組みがあればいいなと思いますね。選択しただけで「気づきリスト」に自動的に入っていくような。そうなると、アウトプット読書法という話ができるようになってくる。自分なりの「気づき」のフィルターで読書ができると、インプットの精度が格段に上がると思うんですよ。

――吉山さんにとって、本とは何ですか?


吉山勇樹氏: さっき「型」と言いましたが、本って、木って書きますよね。木に1本線を引いて、本になる。この字を見ていると、木の中でも根っこの部分が大切なんだと思うんです。本は、その根っこを作るためのツール、足腰を身に着けるためのツールだという気がしています。言われるままに信じて、その方法に全部流されるということではなく、情報収集していく中で自分なりに編集していったら、結局それが自分の魂やコアになっていく。情報過多な時代の中で、自分なりのファクトを持って取捨選択をして、きちんと自分の軸を作っていくことが大切だと思います。そのために、まずは読書量が大事になりますよね。

オープンに広げていくことも必要



――今後電子書籍が普及していく中で、書き手としては、紙の書籍と電子書籍で、書き方に変化は生じそうですか?


吉山勇樹氏: 電子書籍の場合、動画を張りつけたり図式化するなど、ビジュアル的な優位性、ITを活用できる優位性はすごくあると思いますので、メディアミックスということを考えなければいけないなと思っています。新たなプラットフォームになりうることは十分に考えられるので、ビジネスチャンスだと思っています。出版社でも、本当に戦略的にかじを切っているところはまだ少ないとは思いますが、いいものをいい形で届けるような体制は着々と進んでいるなという印象はありますね。

――電子書籍が普及する中で、出版社はどんなところに注力していくべきだと思いますか?


吉山勇樹氏: 読者に対してフロントでアプローチするのは出版社ですけど、僕の場合は、出版社の担当編集の方だけでなく、営業さんとお付き合いします。営業さんは、売り場で実際にデータを見られて、紙でも電子でも、顧客動向やニーズを最も察知している。やはり、顧客の声をどれだけ吸い上げられるかが、非常に大事だと思っています。出版社によっては、読者と近づくための企画をたくさんやっているところもあります。顧客・読者の声をきちんと収集・編集してそれを著者にフィードバックし、新たなことを考えていく。単純に編集作業だけやっていては自己満足の世界になってしまうと思います。変化、時流を敏感に察知しながらリアルな声を収集できるかどうか。結局それが、読者への訴求力につながったりすると思うんです。

――紙の書籍の電子化についてはどう思われますか?


吉山勇樹氏: 権利については、非常に敏感な問題だとは思います。ただ、僕自身は作家ではないので、本を売って食べているっていう意識はないですし、本は、あくまで本業につながるコミュニケーションツールだと思っています。名刺代わりになっている部分も大きいので、そこに制限をかけたいとはあまり思わないですね。むしろ、そういう形で広がれば、読者との会合や講演会を増やして、リアルな熱を伝える機会を持ちたいですね。僕は普段、BtoBの仕事しかしていないので、BtoCで講演するとか、お話しすることがあまりないんです。ですから、読者の集まりなどに呼ばれると、実際の声を聞けてうれしい。書籍の電子化などで、書籍がどんどん広まって、その中で皆さんがつながりを持って、より「気づき」の輪を広げていくことができたら、幸せだなと思います。音楽業界もそうだと思いますが、欧米だと、権利どうこうはとにかく後で、プロモーションビデオなんかでも、とにかく拡散する。拡散した後に、例えばライブに来てもらう。そういう形での収益モデルってあると思うんです。僕は16年ほどDJをしていますが、欧米などだと、You Tubeにどんどん楽曲をフリーで提供して、10万人、50万人とかのフェスをしょっちゅうやっているわけです。そういうところでガッと集客をしたり、発信することでグローバルな展開が生まれるという話もあるので、オープンソース的に広げて、触れていただく度数を増やすことは大事だと思っています。本も同じで、権利ばかりを主張していると、非常にクローズになってしまうので、それってある意味機会損失だなと感じることがあるんですよね。いいものはいいと、どんどん広げていく。当然セールスの部分、著作的な観点ではシビアになるかもしれないですが、それはそれで違う展開を著者自身も考えていかないとダメなのかなと思いますね。

ワークライフバランスではなくワークライフシナジー


――吉山さんはDJもされていらっしゃるんですね。




吉山勇樹氏: 16年やっています。今年も海外アーティストの数百人規模のジャパンツアーで複数回プレイしました。

――忙しい中、趣味を続けていくというのは、やはり段取り力が必要でしょうか?


吉山勇樹氏: あとは職場の仲間や家族の理解が必要だと思っています。「ワークライフバランス」と言いますが、僕は「ワークライフシナジー」だと思っています。ワークとライフってシナジー(相乗効果)を生んでいくものだから、一生の枠組みで考えなきゃと思っているんです。そういう部分を、ウチのメンバーにしろ、家族は、分かってくれている。

――何か将来の夢はございますか?


吉山勇樹氏: この間、早稲田大学で講演した時にも、学生さんから「夢って何ですか?」って聞かれました。インタビューでも、よく聞かれますが、いつも「夢はないです」って答えるんです。あえて言うなら、短期的な夢があると思うんです。今日の夜、仲間と評判のうまいラーメンを食べに行くとかでもいい。週末にちょっとボーナスが入るからスーツを新調しに行くっていうような話でもいい。これをどんどん伸ばしていくと、色々なベクトルが出てくる。短期でも長期でも、これを全部夢だと考えていくと、全体で同じベクトルで動いている。要は自分が好きなことだから、「自分軸」で同じ方向でベクトルが向いてくる。
夢があるのではなく、いつも夢の中にいる。要は「夢中」っていうこと。常に自分がクレイジーになれる、ハマっている状態を持てることは、すごく大事だと思います。

――今後の野望、事業展開などあればお教えください。


吉山勇樹氏: 今は、「アジア」がキーワードです。アジアの中における日本のプレゼンス(存在感)を上げていきたい。自分のビジネスをどうこうするというより、日本という自分の国をもっともっと盛り上げたいという思いが強いですね。今、20代の経営者や頑張っている面々を集めて、「20代から日本を元気に」をテーマにJapan Innovationというプロジェクトを立ち上げているんです。このプロジェクトには、多数の日本企業の経営者が賛同してくれています。アジアは、これから間違いなく世界の中心になっていきます。その中で、日本の存在感を出して行けるようなことを手がけていきたい。そのために、日本のビジネスパーソンの方たちのスキルアップも一つの手段としてやっていきたいと思っています。
これもワークでもあり、ライフでもある。やはりワークライフシナジーなんですよね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 吉山勇樹

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