小笹芳央

Profile

1961年、大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、86年に株式会社リクルートに入社。2000年、株式会社リンクアンドモチベーションを設立、同社の代表取締役社長に就任。同社は設立8年で東証一部に上場。モチベーションを切り口に、企業向けコンサルティングなどのBtoB事業に加え、PCスクールや学習塾、プロスポーツチーム経営やレストラン経営など、BtoC事業も展開するグループの代表として経営に携わる一方、講演・寄稿多数。近著に、『1日3分で人生が変わる セルフ・モチベーション』(PHPビジネス新書)がある。

Book Information

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本は「食らって」知と格闘せよ



小笹芳央さんは早稲田大学政治経済学部を卒業後、リクルートを経て2000年に経営コンサルティング会社リンクアンドモチベーションを設立、代表取締役社長に就任され、実業家、経営コンサルタントとして活躍するかたわら、モチベーションに関する著書を多数執筆されています。そんな小笹さんに、読書について、電子書籍についてのお考えを伺いました。

モチベーションエンジニアリングで世界を変えよう



小笹芳央氏: リンクアンドモチベーションがコンサルティング会社としてスタートしたのは2000年のことで、企業の成長、変革を支援する上で社員のモチベーションに着目をして、人材の採用から教育、また人事の諸制度、あるいは組織の風土、文化作りのお手伝いをして成長してきた会社です。基幹技術の「モチベーションエンジニアリング」を使って、人のやる気を引き出すような仕組みを作ったり、モチベーションという観点から企業を診断し、それを改善改革していくソリューションを提供しています。創業10周年を機にBtoCの領域にもその技術を展開し始めました。

――組織のモチベーションだけでなく一個人のモチベーションも上げていくのですね。


小笹芳央氏: モチベーションエンジニアリングを企業向けに提供してきたのが創業から10年なのですが、これからの時代はモチベーションカンパニーが時代を制するんだという考えを発信してきました。そして、この技術を個人にも提供できるということで、学習塾業界へ参入したり、テレビCMでおなじみの「パソコン教室のアビバ」を買収してグループに加わっていただいたんですよ。そこでパソコンスキルだけではなくて、資格取得を支援する事業を展開するなどして、個人のキャリアを支援します。

――モチベーションカンパニーというと、具体的にどのようなことなのでしょうか?


小笹芳央氏: モチベーションカンパニーというのは、「そこで働く人のやる気」というものを企業の成長エンジンと捉え、成長し続ける企業のことです。「モチベーションカンパニーを目指しましょう、そのためのコンテンツ、プログラム、コンサルティング、あらゆるものをワンストップで提供しますよ」というのがこれまで企業向けに展開してきたBtoBのビジネスです。一方、BtoCの個人向けには「これからの時代、アイカンパニーを発展させましょう」というメッセージを発信しています。

――アイカンパニーとはどのようなことなのでしょうか?



小笹芳央氏: アイカンパニーとは、自分を1つの会社と見立て、一人一人がその会社の経営者として自分株式会社を営み、自分探しではなく自分作りに励み、そして、自分株式会社を人気企業にしていきましょう、優良企業にしていきましょうという考え方です。そして、そのアイカンパニーを磨き上げていくために必要なモチベーションコントロールスキルやコミュニケーションスキル、あるいはパソコンスキルや資格取得支援などを、ワンストップで提供できるようにということで、今個人向けのコンシューマー部門も拡充を急いでいる途中ですね。

――BtoC、コンシューマー向けにそういう部門を切り開いたきっかけをお教えいただけますか?


小笹芳央氏: 今までモチベーションエンジニアリングの手法を使って、企業内個人にサービスを提供してきたのですが、「自分たちの技術はBtoCにおける教育にも転用できる」という考えが技術的な側面からありました。もう一つは、社会的な問題意識として、今の時代、終身雇用が崩れ、個人が会社に「寄らば大樹」みたいな形で人生を預けていけば定年まで安泰だという時代はもう過ぎ去った。むしろ、個人個人がしっかりと自立的、主体的に自分を磨いていく、そういう意識が必要なのではないかということで、「アイカンパニーという意識を持ちましょう」と、社会的にメッセージとして訴えたかったんですね。今は教育の分野に力を入れ始めたところです。究極は、人のモチベーションを成長エンジンとする「モチベーションカンパニー」と、しっかりと自立的に自分自身を磨き続けようとする、学び続けようとする「アイカンパニー」が、両者のコラボレーションで産業全体が活性化するんだという考え方が根底にはあります。

エクセルで作る「ネタ帳」「長期計画」「一日日記」の連動がネタ作りの秘密


――執筆についてお伺いしますが、本を書かれるときは、どこか特定の場所はございますか?


小笹芳央氏: 自宅にある書斎のデスクが一番ですね。アイデア出しをしたり、集中するときはその部屋にこもりますし、出社しているときは、社内では「コックピット」と呼んでいる社長室がありますので、そこで構想にふけるというようなことをやっていますね。

――「コックピット」と呼ばれるいわれは何かございますか?


小笹芳央氏: 2001年から今のビルに移ってきたのですが、会社全体を操縦する操縦室のような感覚で、幹部とのミーティングや、非常に重要な人事関連の情報共有をそこで行ってきたものですから、コックピットと呼ばれるようになっています。

――原稿はやはりパソコンで書かれるのですか?


小笹芳央氏: はい。パソコンのエクセル上に色々なネタ帳のようなものを作っていまして、それに何百もネタがあるんです。それをどんどん追加していっているわけですけれども、「ある本をこういうタイトルで」というときには、その中のどれをどう編集して出すか、言いまわしを変えて出すか、600項目ぐらいの中のどこに光を当てるか、など考えることに一番時間をかけています。最近は実際に文章化するところはライターさんがやってくれることも増えましたので、構想と編集といわゆるネタ、そこさえしっかりしておけば、2ヶ月ぐらいで完成します。

――エクセルの中にネタは日々積まれていくわけですか?


小笹芳央氏: 最近はちょっとサボっているんですけれども、だいぶためていますね。講演会も年に80回ぐらいやっていますので、その参加者や、あるいは書籍の場合は読者に届くキーワードをためています。例えば、「これからの時代は自分探しではなくて自分作り」とセミナーで言ったら「ははあー」という反響があった。そういう皆さんに届きそうな、刺さりそうなキーワードなど、色々なネタを蓄積しつつ、増やしてきているという感じです。

――普段の行動において、何か心掛けていることはございますか?


小笹芳央氏: もう習慣ですけれど、パソコンを開くと「一行日記」を書くようにしていますね。これはもう10年ぐらい続けているんです。エクセルに「今日何があった」とか「こんな気づきがあった」という一行日記のページと、それとは別に、5年とか10年単位の構想のページがあって、これは長期レンジで考えるときに使用します。この2つを行ったり来たりしながら、時には今日1日明日1日という短期視点、一方では5年、10年の長期視点に立って「ああだこうだ」と構想を練る。要は頭の中の時間の物差しを伸ばしたり縮めたりするわけですね。自分のコンディションによって、「ちょっと今日は憂うつだな」と思ったら長期のほうを見ます。また、長期の構想ばかりで日々がおろそかになりそうになれば、一行日記に移ります。それを繰り返しているうちに、いろんなネタが浮かんだりしますね。それ以外にも、何か書籍を読んで自分が啓発されて、自分なりの言葉に落としたネタとか、そういうのもあるわけですけれど。長期と短期の時間軸を行ったり来たりするというやり方は、自分自身のモチベーションをコントロールする上ですごく大事だなと思っています。

著書一覧『 小笹芳央

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